ちゃんななにえる

きゃしーです。TEENTOPの天使ニエルの妄想炸裂溺愛中の変態です。@TT_cathy

無言の返答

「これってさ、俺らも大人になったってことだよね、」


『大人っていうか、さ…』








数時間前。



数年ぶりにニエルに再開した。


友人と夜ご飯の約束をして、待ち合わせ場所に行くと何故かニエルも一緒にいた。


「久しぶり、」

ニエルは照れたような、気まずそうな笑みを浮かべた。


『なん、で』


友人の顔を見ると少しにやにやしていて、

友人「さ、はやく行こー」


何だか訳がわからないまま予約していたレストランに3人で向かった。





ニエルは私の元彼だった。


別れた理由というのは、いわゆる自然消滅で。


お互い嫌いになった訳でも、他に好きな人が出来た訳でもなかった、と思う。



だからこそ気まずいというか。



食事中は友人が学生時代の話に華を咲かせ、なんとか沈黙は避けられた。



友人「あっ電話、ごめん、ちょっと席外すね」

『えっちょ、』


友人は席を立ち、入り口付近まで離れてしまった。




少しの沈黙。


「あのさ、」


それを破ったのはニエルだった。




「この後なんか予定ある?」



『え、このあとは…』

友人「ごめーん2人とも!急用出来ちゃったから先帰るね!食事代立て替えといて!」



『ちょっと!』


返答する前にあっという間に店を出てしまった。


『もう、勝手なんだから…』


今日のこの状況、たっぷり説明してもらおうと思ったのに!



あ…


ニエルとの話途中だった。



「なんか用事とかある?」


『ない、けど…』



「よかった、じゃあもう一件付き合ってよ」



にこ、と軽く笑ったニエルは別れる前と全然変わってなくて、戸惑いながらも首を縦に振った。



間もなくレストランを出て、2人で飲み屋街を歩いた。



その間も会話は特になくて。






ふと、前を歩く2人の男女が目に入る。


男性は女性の肩を抱き、飲み屋と飲み屋の間に建つ薄いパステルカラーのビルの中に入っていった。

たぶん、ラブホテルってやつ。



会話もなかった私達は、その光景をなんとなく見ていて、




「………入る?」


『はっ!?』


なんの前触れもなくニエルがそういうから、思わず大声で答えてしまった。


幸いあちこちの飲み屋から雑音が聞こえていて、私達を見てる人なんて誰もいなかったけど。





「ルームサービスとかあるんじゃない?静かな所に行きたい」





この時の私は、何を考えてたかよく覚えてない。


こんな所に入って、何もない訳がないのはわかってたはずなのに。

でも嫌な気はしなかった。


たぶんどこかで期待してたのかもしれない。








ラブホテルという割には意外と普通のホテルっぽくて。


『初めて入った、』


思わず口にした。


とりあえずルームサービスで頼んだアルコールを口にする。





「これってさ、俺らも大人になったってことだよね」


『大人っていうか、さ…』



まあ、これから起こり得る展開なんて、予想出来ないほど子供じゃない。



『ニエルは、こういうこと平気でするようになったんだね…』


アルコールがまわってくると、言いたい事が少しずつ出てきた。


「どういうこと?」



『なんでもない女の子とホテル来たりとか』



俯きがちにグラスの泡を見つめながらわざとらしくそんな事を言う。


ニエルの手が頬に伸びてきて、顔にかかった髪をかきあげた。



振り向くと真剣な顔をしたニエルがこっちを見ていて。



「なんでもない女の子じゃないでしょ?」


『元カノなんて、なんでもないじゃない』


「俺は今日だけで終わらせる気はないけど」


『どういうこと…』


「こういうこと、」



カタン、と席から腰を上げたニエルの顔が近付いてきて口付けられた。


『んっ』


ニエルの肩を両手で押す。



『いみ、わかんない…』


「もう1回、俺の彼女になってよ」



は…………





ほんと、


今日の私は何を考えてたんだか………




私は返事をせず、かわりにニエルに口付けた。