鼓動が君を呼んでる
”『ごめん、ニエルのことそういうふうに見たことなくて…なんていうか━━━━』”
そう言ってヌナは僕の告白を断った。
でも僕の気持ちはそう簡単には変わらなくて。
”弟みたいに見てた”
確かにヌナはそう言った。
でもさ、
どうして僕を見て泣きそうな顔するの?
おまけに、ヌナはなんだか最近苛々しているみたいで。
共演した女性タレントと話してる時も、ヌナの視線を感じた。
『仲、良いんだね』
通りがかりにそんなことを言ってきて、
「そう?仕事の話しかしてないけど」
『ふーん』
そっけなく返事をして通り過ぎようとしたからその腕を掴んで引き止めた。
ばっ、と振り返った顔は赤くて、なんだか期待感ばかりが募る。
『な、に…』
「気になる?」
『べ、別に……』
「ねえ、今僕のことどう思ってる?」
『それは…』
「もう一度、考えてもらえない?」
掴んだままの腕を引っ張って、通路の陰までつれてくると連れてくると、その華奢な体を包み込んだ。
『ニエル何してっ…』
誰かに見られたら、と慌てるヌナ。
「死角になってるから大丈夫だよ」
と更に強く抱きしめるとしぶしぶ大人しくなった。
「どう?」
『…心臓バクバクしてる……』
「僕も。僕はヌナが好きだからドキドキしてるんだけど、ヌナは?」
『…好き、だから…?』
僕に見られないようにか、僕の胸に顔をくっつけて消えそうな声でそう言った。
耳まで真っ赤にしてるの、見えてるよヌナ。
遠慮しがちに僕の背中に腕を回してきて、もうその行動全てが僕をときめかせる。
『ごめんね、傷つけて…』
少し間が空いて、
ちょっと申し訳なさそうに言った。
ダメだ、僕ヌナのこと好きすぎる。
「あー、ほんとにもう………」
ため息混じりに呟いたら、怒ったと思ったのか不安げな顔で僕を見上げてきた。
その隙を狙って、ヌナの唇に自分のそれを重ねた。
初めて触れたヌナの唇は、とても柔らかい。
「ヌナのこと好きすぎて…もう離れたくない。片想いって切ないけど両想いでもちょっと大変だね」
笑って言うと、
『そんなにあたしのこと好きだったんだ、』
って悪戯に笑ったから、仕返しに腕の力を最大に込めてやった。
「そうだよ。これからは僕の愛を存分に味わってもらうからね」
『痛い痛い!わかったから!仕事戻らないとっ』
仕方なく離してあげたら、背伸びして頬に軽くキスされた。
『たぶんあたし、ニエルのこと弟って思ってなかったかも』
「じゃあ、なに?」
『そばにいて安心する存在、かな。だからニエルの告白断ってからずっともやもやしてた』
「だったらもう僕から離れられないようにしてあげる」
ヌナのほっぺにもお返しのキスをあげた。