お願いだから

『ん〜これはどう？ねえニエル』

「うん、それも可愛いよ」

さっきから現れる度に服が違う。

なんでも、中学時代の友達で久しぶりに集まるんだとか。

『みんなどんな風になってるかなぁ。大人になったよね〜』

「…さっきから肌出過ぎな服多くない？」

『そうかなぁ？』

「そうだよ」

肩出し過ぎだし屈んだら谷間見えそうだし。

『じゃあもう一回…』

そう言って自室に駆け込むヌナ。

ほんと、どれ着ても似合ってて可愛くて…

行かせたくないって気持ちをなんとか堪える。

『これはどう？』

「あ………」

真っ白のワンピース。

襟や裾にはレースがあしらわれていて、まるで

天使かと思った。

『………変？』

「いや………」

はあ、と息をついて読んでいた雑誌を置いてソファから立ち上がった。

無言で近付く僕に少し構えるヌナ。

あごを軽く持ち上げてグロスが塗られた唇に軽く口付けた。

『んっ、ちょっと』

「お願いだから…」

ぎゅ、とヌナを包み込んだ。

『ニエル？どしたの……』

ヌナは心配した表情で僕を見る。

「お願いだから、これ以上綺麗にならないで」

『え、何…』

こんなに可愛いヌナが誰かに取られるんじゃないかって、
いつも不安になるんだ。

『綺麗かどうかは置いといて、今の私がいるのはニエルのおかげなんだよ？』

「ヌナ…」

『ニエルこそ、会う度かっこよくなってて、ほんと困っちゃう』

「僕だって、ヌナがいるから今の僕がいるんだ」

…自分で言って恥ずかしくなってきた。

ヌナを抱きしめたまま顔を合わせられないでいると、

腕の中のヌナが顔を上げて僕を見上げた。

『あ、ニエル顔真っ赤』

「…今見ないで」

『見る(笑)可愛いニエル。ねえ、もう一回キスしよ？』

こんなに可愛いヌナを知ってるのは、たぶん僕だけ。