もっと妬いて
ある日の会話。
『ニエルー、明日会社の人とご飯行くことになったから帰るの遅くなるね』
「うん、わかった」
また別の日の会話。
『今度の日曜日同窓会があるから出かけてくる』
「気をつけてね」
まただ。
一緒にご飯行く人の性別だって言ってないし、同窓会なんて絶対異性がいるのわかってるのに、すんなり受け入れるんだ。
それが悪いって訳じゃないけど…
『友達に合コンに人数合わせで来て欲しいって言われたんだけど…』
「……それは、しょうがないね」
『本当に行ってもいいの?』
「え?」
『合コンだよ?行ってもいいの?友達とご飯行くのとは違うんだよ?』
「どうしたのヌナ…」
『ニエルは、私のことが好きなの…?』
たまに不安になる。
少しくらいやきもちとか妬いてくれてもいいのに…
不安を口に出した瞬間、感情が溢れた。
「えっヌナ!?泣いてる…?」
私の方が歳上なのに、歳下みたい…
『ぅ、っ…ふぇ』
「……ごめん、僕…」
ニエルの両腕に包み込まれる。
『なん、で、謝る、の?』
喋る度に涙が溢れた。
そんな私の頭をなだめるようにぽんぽんするニエル。
「僕、ヌナを不安にさせることしてたんだね」
困ったように眉を下げるニエルに、思っている気持ちを吐き出した。
ニエルはうん、うん、と黙って話を聞いてくれた後、
「僕、ヌナより歳下だからさ、あんまり妬いて子供みたいだなとか、めんどくさいとか思われたくなかったんだ」
『ニエル…』
「本当は男の人がいるところに行かせたくないよ。誰とどこに行くのかも気になるし、合コンって聞いた時、どうにかなりそうだった」
目尻に残る涙を指ですくいとって、
「合コンなんて、行かないで」
『…行かないよ。行く気なかったもん』
「泣かせてごめんね」
『ううん、わがまま言ってごめん』
「じゃあこれで仲直りだね」
喧嘩ってわけじゃなかったけど
ふわっと優しい笑顔が近付いて、唇が重なった。